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寺の子鹿

暑い日の午後。寺の境内には鹿がいた。


観光客用の餌を買って、私が歩き出すと、どんどん鹿たちは寄って来る。
グイグイ来る。




面白がってあげていたら、
出遅れた身体の小さな鹿が、視界に入った。
ふと顔を見ると、その鹿は片目が潰れていた。



強い雄鹿の角が刺さってしまったのか…。
まだ幼い姿の鹿。
喧嘩などではなく偶然の不運だろう。



不具の鹿。




他の観光客も、一瞬目を背ける。



私は、その子に、人参をあげようと、差し出すが、
角度によっては、餌が見えないのか、
ほかの鹿が横から食べてしまう。



「ね、そんなところにいないで、こっちにおいでよ。」



欲しそうにはしているが、他の大きな鹿の角が怖いのか…。
前には出てこない。
痛かったのだろう…。この傷。




その子が横を向く。
痛々しい潰れた目の傷はまだ完治してはいない。
首を撫でてやる。




しばらく側にいたが、輪の中から離れて行ってしまった。
遠くで、くーんと、小さく鳴いた。
大丈夫。そおっとしておいてあげよう。お腹が空けばまた来る。




この子はこの子なりに、きっと生きる術を学んでいくさ…。
鏡を見て悲しむことはないのだから。

そう、思い直してみたりする。


でも、
私の心の中の楽しい雰囲気は、一瞬で消えてしまった。



私は、自分のこの心の中にも、その不具の鹿が住んでいることを
思い出してしまったから…。


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Author:ダリア
可愛くない私を、嫌々育てた母。仕事第一の父。そして溺愛された弟。病んでいく私。
ネグレクト、被虐待児のいく末です。

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