2019/01/18
こんな事を思い出した。癌闘病中、私の通っていた大きな病院(毎日百人以上の患者さんがいらっしゃいます。)で、再発後の治療をしていたキタさんという方。
とてもお洒落で、明るく、朗らか、いつも笑顔。二児の母だ。が、もう、肺にも肝臓にも転移をしている。言われなければ、まさかそんな状況とは誰も想像だにしないだろう明るさ。
待合室で、週末旅行のお土産を皆に配る。写真を笑顔で見せ、土産話に花が咲く。
美しく、目立つ方だった。でも、そこでは、患者さんたちは、彼女の事を、不思議に思う人も多かった。こんな声も聞いたことがある。
「あんなに無理しなくていいのに…。」
「見ているのが辛くなるよね。」
「もっと素直に弱音を吐けばいいのに。」
「みんな、わかってる。本音をわかってる。泣いたっていいのに。」
でも、それが彼女の生き様。それはそれで立派。私は、否定はしない。そうすることが、彼女の生きる力になっていたのかもしれないから。と、私は思っていた。
彼女の周りの仲良しグループのメンバーは、再発組。
中には、辛い余命宣告を受けて、診察室から、目を腫らして出てくるひとだっている。それでも、皆、黙っていたわりの心で、それを見ているのだ。
でも彼女は、そういう方にもケタケタ笑って「大丈夫よ」と声をかける。
今の世の中、弱音を吐く、暗い、泣く、…。こんな事は許されないと思っている人がいる。
明るいという事が、そんなに良いことでしょうか?
自分らしく生きるという事を捨ててまで、明るく振る舞うのは誰のため?子供に病で苦しむ姿を見せるという事も、子供がある程度大きければ悪いことではない部分もある。辛いが、子供の学びにもなる。家族皆で受け入れる事も、患者の力になる。
キタさんが抗がん剤の点滴で隣のベッドになった時に、私は、彼女と先生との会話を聞いてしまったことがある。
「もう、首の骨にも転移しているから、気をつけてね。」
「あちゃー!!!そうなんだぁ~!!あはは~。先生、本当??テニス、ダメ?」
「首が折れたら、首から下が全て麻痺するかもしれないな」
「あはは~!!麻痺ってサーーー!!車椅子かーー!!えへへ、ヤダァー(笑)」
笑顔。。。
ものすごく強い人なのか?それとも、感情を出せない方なのか?正直わからなかった。もしかしたら、私と同じ生い立ちで、感情がわからないのかもしれない、とも思った。私は、闘病中、歯科医の友人にこうアドバイスされた。
「辛いよね。実は、義妹も今闘病中なんだよ。」
「絶対オススメはお笑い番組を録画してみる事!そしておいおい泣く事!」
その二つはね、同じ効果があるんだよ。免疫力が高まるんだよ。
食事に誘ってくれた。
くよくよしないために、お笑い番組みるの。
でも、明るく振る舞うのはダメ!だって心を削っているのと同じ。
「癌患者に明るさを強要するのはね、世間が泣いているひとを見るのが辛くていやだからだよ。みんな怖いから、笑っていて欲しいんだよ。」
そうも言われた。暗くたっていいじゃない。泣いたっていいじゃない。下を向いている時があってもいいじゃない。
前出のキタさん…、いよいよ具合が悪くなった時に、自分で用意した便箋に、遺書を書いたそうだ。最初に、友人。先生。
痛み止めのモルヒネで、意識が薄れていく。
最後に、ご家族への遺書を書こうと思っていたそう。
が、二人の息子さんと、ご主人への遺書は、もう何が書いてあるのかわからなかったそうだ。
そのまま彼女は亡くなった。大事な家族に、言葉を残すこともなく…。
そういうの、彼女らしいよね…。と、寂しそうに、彼女の友人が、言った。
もしかしたら、彼女が、全てを受け入れて、「怖いよ。悲しいよ。死ぬのヤダよ。」と、子供のように泣けたなら、状況が変わっていたかもしれないと、そんなことも、フっと思うこともあった。
~~個人的な意見です。お目こぼしください。