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「前向き」の功罪~その2

こんな事を思い出した。癌闘病中、私の通っていた大きな病院(毎日百人以上の患者さんがいらっしゃいます。)で、再発後の治療をしていたキタさんという方。

とてもお洒落で、明るく、朗らか、いつも笑顔。二児の母だ。が、もう、肺にも肝臓にも転移をしている。言われなければ、まさかそんな状況とは誰も想像だにしないだろう明るさ。



待合室で、週末旅行のお土産を皆に配る。写真を笑顔で見せ、土産話に花が咲く。

美しく、目立つ方だった。でも、そこでは、患者さんたちは、彼女の事を、不思議に思う人も多かった。こんな声も聞いたことがある。

「あんなに無理しなくていいのに…。」
「見ているのが辛くなるよね。」
「もっと素直に弱音を吐けばいいのに。」
「みんな、わかってる。本音をわかってる。泣いたっていいのに。」


でも、それが彼女の生き様。それはそれで立派。私は、否定はしない。そうすることが、彼女の生きる力になっていたのかもしれないから。と、私は思っていた。





彼女の周りの仲良しグループのメンバーは、再発組。
中には、辛い余命宣告を受けて、診察室から、目を腫らして出てくるひとだっている。それでも、皆、黙っていたわりの心で、それを見ているのだ。

でも彼女は、そういう方にもケタケタ笑って「大丈夫よ」と声をかける。

今の世の中、弱音を吐く、暗い、泣く、…。こんな事は許されないと思っている人がいる。






明るいという事が、そんなに良いことでしょうか?






自分らしく生きるという事を捨ててまで、明るく振る舞うのは誰のため?子供に病で苦しむ姿を見せるという事も、子供がある程度大きければ悪いことではない部分もある。辛いが、子供の学びにもなる。家族皆で受け入れる事も、患者の力になる。







キタさんが抗がん剤の点滴で隣のベッドになった時に、私は、彼女と先生との会話を聞いてしまったことがある。
「もう、首の骨にも転移しているから、気をつけてね。」
「あちゃー!!!そうなんだぁ~!!あはは~。先生、本当??テニス、ダメ?」
「首が折れたら、首から下が全て麻痺するかもしれないな」
「あはは~!!麻痺ってサーーー!!車椅子かーー!!えへへ、ヤダァー(笑)」
笑顔。。。
ものすごく強い人なのか?それとも、感情を出せない方なのか?正直わからなかった。もしかしたら、私と同じ生い立ちで、感情がわからないのかもしれない、とも思った。






私は、闘病中、歯科医の友人にこうアドバイスされた。
「辛いよね。実は、義妹も今闘病中なんだよ。」
「絶対オススメはお笑い番組を録画してみる事!そしておいおい泣く事!」
その二つはね、同じ効果があるんだよ。免疫力が高まるんだよ。
食事に誘ってくれた。

くよくよしないために、お笑い番組みるの。

でも、明るく振る舞うのはダメ!だって心を削っているのと同じ。



「癌患者に明るさを強要するのはね、世間が泣いているひとを見るのが辛くていやだからだよ。みんな怖いから、笑っていて欲しいんだよ。」
そうも言われた。暗くたっていいじゃない。泣いたっていいじゃない。下を向いている時があってもいいじゃない。







前出のキタさん…、いよいよ具合が悪くなった時に、自分で用意した便箋に、遺書を書いたそうだ。最初に、友人。先生。
痛み止めのモルヒネで、意識が薄れていく。

最後に、ご家族への遺書を書こうと思っていたそう。





が、二人の息子さんと、ご主人への遺書は、もう何が書いてあるのかわからなかったそうだ。





そのまま彼女は亡くなった。大事な家族に、言葉を残すこともなく…。






そういうの、彼女らしいよね…。と、寂しそうに、彼女の友人が、言った。





もしかしたら、彼女が、全てを受け入れて、「怖いよ。悲しいよ。死ぬのヤダよ。」と、子供のように泣けたなら、状況が変わっていたかもしれないと、そんなことも、フっと思うこともあった。

~~個人的な意見です。お目こぼしください。

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「前向き」の功罪~その1

昔、癌経験者の本を読んでいた時、
「あ、このひとは、死ぬ…」
と直感的に思った著書があった。

独身で美容師であるという著者は、闘病日記にも関わらず、力に溢れ、本には、明るくこう綴られていた。

「私は、手術の後、抗がん剤が終了したら、すぐにお店を再開し、今まで以上の努力をして、たとえ寝る時間がなくても、どんなに苦しくても、どんな時でも精一杯の笑顔で生きていこうと思う。絶対に弱音は吐かない。絶対に、健康に気をつけて、常に前向きに、生きて、再発しないように必死に頑張ろうと思う」


どこをめくっても、前向き、絶対、どんなに苦しくても、必死で、笑顔で、の文字がある。





こりゃ、ダメだ…、と、私は思った。





で、そのあとがきを読んで、愕然とした。「こんな素晴らしく前向きな方は、絶対に癌に勝つと、確信しています。是非これを皆さんに読んでいただいて、癌も怖くないと知っていただきたかったので、出版を勧めました。」
とありました。

これには芸能人などの闘病の報道にも垣間見えるような気がします。無理して出てきて亡くなってしまった歌舞伎役者。焦って復帰を急ぎ寿命を縮める女優。それを前向き、と捉える風潮。

「女優〇〇さんの癌の手術成功!」などという見出し。江戸時代じゃあるまいし、手術が成功しないなんて事はまずあり得ません。大変なのはその先の、抗がん剤、放射線治療。




まだ認知不足なんだなぁと思います。






「頑張らないという選択」を許さない風潮。「絶望」さえ許さない風潮。

癌というのは、治療後に一番の試練がやってくる。そう、再発の恐怖だ。ほとんどの癌は再発したら、ほぼ完治はない。誤解を怖れず言えば、再発イコール死だ。そんな感覚。術後は、ゆるゆるにしていないと…。

抗がん剤の副作用だってあるんですよ。私はうっ血性心不全。心臓が半分しか機能していません。もう治りません(笑)







アフラックのCMでは、若い癌患者が明るく笑顔で、前向きに生きる癌患者が笑顔を振りまく。うーーん…。男性患者のロングバージョン。
病歴のフリップが出ていて、ビックリ。再発、肝臓転移、二十代前半。これで、笑って生きる??なんでも明るく言いますね~、って、心が痛む。

肝臓転移、肺転移、脳転移、骨転移…。そして、命の火は消える。



笑いたい時には笑えばいいの。でも泣きたい時には泣かせてあげて。
そうやって、頑張り過ぎて生きてきて、癌になったのだから、生き方を変えないと…。
ゆっくり休んで、のんびりと過ごして、しあわせな時間を増やして、自分を大事にしてあげる事です。




「前向き」根性で、癌が治るなんて、そんな甘くはない…。

鬱も、同じです。
頑張るという生き方を変えることです。



自分優先。で、いいんです。他の人のことは、治ってから!✨


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白いバス

目の前を一本の線が見える。

その線に沿ってバスが通っている。
私たちは、バス停で、そのバスを待っている。
主人、息子、友人の顔も見える。





あ、バスが来たよ。

白いバス。





運転手は、虹色の服を着て、光の様に座っている。
そして、あなたはそこ、あなたはここへ、と、席を指定している。




私がバスに乗り込もうとした、瞬間、虹色運転手は目を大きく見開いて、
私を覗き込み、
早口でこう言った



『あなたは、乗れません』



…。




出発です。




私は、


ひとり、


残される。



皆は、何も言わずに、前を向いて座っている。



あ、あ、主人、



息子…。




私は、別の道だと言う。

バスは、光の中へ出発した。





闘病中によく見た、夢だ。



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看病、「してやった」

闘病中、両親が、食事を作りに来てくれていた。

朝、主人と息子が、家を出て、
9時ごろ両親がやって来る。

玄関のドアを開けると、
「来たよ」
と寝室のドアを少し開けて、顔も見ないでキッチンへ行ってしまう。
父はギターの練習を始める。
何故だろう…。顔も見ない…。

母は、何やらキッチンで、ずっと、食事の用意やら、何やらをしている。

何も話はしないのだ。
長年の習慣で、親がいるとゆっくり寝ていられない。何か怒っているのでは、と、
心が疲れる。

テレビを見ながらの黙ってする昼食。
そして、息子が帰る時間におやつを出して、息子と話して、
「じゃ、もう帰るから、家に帰ったら、買い物をして洗濯をして夕食を作らないといけないから」
と言って、帰る。

その繰り返し。ため息と、不機嫌。



洗濯は、この家ですれば良くないか?夕食も、うちで5人分作って持って帰れば良いのではないか?わざわざ分けて作らなくても良いのではないか?と、思った。

それは、こんなに大変だ、家事をさせられて、こんな年になってまで、こき使われて、と思う気持ちが手に取るようにわかった。

キツい。何も話さない。怖い。
冷蔵庫をバタンとしめる。
ドアをバシっとしめる、キッチンの収納をガンっとしめる。
お鍋の蓋の音。

そんなのをベッドでドキドキしながら、聞き入る。
恐ろしい。
幼い頃からこういうことにはとても敏感なのだ。

お願い、ご飯なんて作らなくて良いから、
ピザでも頼んで、お花でも気持ちよく飾って、
楽しくご飯を食べたい。
楽しい話しをしながら…。不機嫌に作った料理を、
ボソボソと黙って食べる毎日。



忙しがる母…。

私がして欲しかったのは、話だった。

何もしなくても良いから、励まして欲しかった。
たわいのない話をして欲しかった。たとえ、スーパーの出来合いの惣菜でも、
楽しく話しながら食べたかった。

はっきり言って、来られるのが苦痛だった。
泣きたくても泣けないし、
黙ってただいるだけで、気まずかった。
帰るとホッとした。

何故だろう、相変わらず、不機嫌。

こんな時にまで、親の顔色を伺うのが辛かった。



そして、闘病が終わって数年後、何かの折に、言い合いになった時、母はこう言った。

「 何?あの時あれだけ色々やってやったのに!!あんなに、色々してやったのに!」







私なら、そんなこと、思わないと思った。

私が、母だったら、子供が癌で闘病していたら、できるだけのことをしてやりたい。
励ましてやりたい。


やってやった、などと、思わない。

看病したい。

「あの時の恩も忘れて!」と、凄んだ母。

でも、何故か、その時に私はこう思った。

やらなきゃいけないことは、宿題として人生の中で、やらされるんだ。
子育ての時に、いやいや私の面倒を見ていた分、
後になって余計に私に関わらなければならなかったんだ。
神さまにやらされたんだ。と。

憎らしい子が癌になった。
面倒を見たくないけれど、仕方がない。
「やらされた。」
また、そう思ったんだなぁと、私は感じた。
仕方がないじゃん、産んじゃったんだから。
可愛がって欲しかったなどと贅沢は、言わない。でも、
家のゴタゴタや、自分の不満のはけ口にして、
いつも私に怒鳴り散らしていたのはやめて欲しかった。
心を病むほど、私を壊した事は、取り返しがつかないのだから。


この人、まだ宿題終わってないわ。

子育ては豊かで、楽しくて、時には大変だけれど、実りのあるものだ。

でも、この人は、そう感じる事が出来なかった。
なんと不幸な、気の毒なひとか。

そんなに嫌いだったら、産まなきゃよかったじゃん。
そしたらこんな看病もしなくて済んだのにね。


いや、私は母には必要な存在だった。

自分の淋しさや不満を押し付ける吐きだめとして…。


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七夕飾り

〜思い出す事をランダムに書いています。
あちこち話が行ってすみません。
今日は、こんなお話。
七夕飾りのお話。

一年半の乳がんの闘病。
その頃は毎日毎日ひとに助けられて、
人の優しさが、こんなに心に沁みた日々はなかった。

闘病時の初夏。
七夕にの頃…、学校前のスーパーの駐車場に、
大きな大きな笹が飾ってあった。

その笹は、二階建てのスーパーの屋根まである立派なものだった。
きっと、男の人何人かで運んだものだということがわかった。
土台も組んであった。

ふと目をやると、
その、真ん中に息子の短冊があった。

「願いが叶いますように 」

他の子は、サッカーに選手になりたいだの、
可愛らしい願い事。プリキュアのなんとかがほしいだの、
書いてあった。

息子の短冊を見て、
私は、心が揺れた。

息子の手を握りしめて、空を見上げた。
『七夕の日…、雨、振らないとイイネ。』
こう言うのが精一杯だった。

息子は黙っていた。

ごめんなさい。ごめん。
辛かろう。

10歳の息子だ。
どうか、この子から、母を取り上げないでください。
こんなのでも、母なんです。
この子の母。

エンジンをかけて、クルマを出す。
家に帰ると、疲れたと、嘘をついて、ベッドにもぐった。

私は、子供の頃から生きるのがつらくて死ぬなんて怖くなかった。
できたら、早めに人生終わったらいいなぁとか、思っていたんだ。
でも、これは、学校全体で、作ってくれた七夕飾りなんだって思ったら、
私は絶対に生きないといけないんだって、思った。
そして、私は人にもっと感謝しないといけないんだって
思った。


家に戻ってベッド布団をかぶって馬鹿みたいに大泣きをした。


後にも先にもその場所に七夕の笹が飾られたのはその年だけだった。

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プロフィール

ダリア

Author:ダリア
可愛くない私を、嫌々育てた母。仕事第一の父。そして溺愛された弟。病んでいく私。
ネグレクト、被虐待児のいく末です。

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